Go言語の競合状態と同期ツール sync パッケージ

競合状態 (Race Condition)　は、複数のゴルーチンが同じメモリ領域（変数やデータ構造など）を同時に操作し、その操作順序がプログラムの動作に影響を与える状態を指します。

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競合状態の例

以下のコードでは、複数のゴルーチンが同じ変数 counter を同時に操作しています。

package main

import (
    "fmt"
    "sync"
)

var counter = 0

func increment(wg *sync.WaitGroup) {
    for i := 0; i < 1000; i++ {
        counter++ // 競合状態発生の可能性
    }
    wg.Done()
}

func main() {
    var wg sync.WaitGroup

    for i := 0; i < 10; i++ {
        wg.Add(1)
        go increment(&wg)
    }

    wg.Wait()
    fmt.Println("Counter:", counter) // 正しい値にならない可能性
}

問題点:

• counter++ の操作は非原子的 (atomic) であり、複数のゴルーチンが同時に実行すると不整合が生じます。
• 結果として、最終的なカウントが予期しない値になることがあります。

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sync パッケージの役割

sync パッケージは、並行処理における同期を提供するためのツールを集めたものです。主に以下の2つが競合状態の防止に使われます。

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1. sync.Mutex

ミューテックス（Mutual Exclusion）は、データへのアクセスを一度に1つのゴルーチンに制限する仕組みです。

使用方法

• Lock: 他のゴルーチンがデータにアクセスできないようにする。
• Unlock: 他のゴルーチンがアクセスできるようにする。

package main

import (
    "fmt"
    "sync"
)

var counter = 0
var mu sync.Mutex // ミューテックスの宣言

func increment(wg *sync.WaitGroup) {
    for i := 0; i < 1000; i++ {
        mu.Lock() // ロック開始
        counter++
        mu.Unlock() // ロック解除
    }
    wg.Done()
}

func main() {
    var wg sync.WaitGroup

    for i := 0; i < 10; i++ {
        wg.Add(1)
        go increment(&wg)
    }

    wg.Wait()
    fmt.Println("Counter:", counter) // 正しい値になる
}

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2. sync.WaitGroup

sync.WaitGroup は、複数のゴルーチンの終了を待機するための構造体です。

使用方法

• Add(n): カウントを増やす。
• Done(): カウントを減らす。
• Wait(): カウントが0になるまでブロックする。

package main

import (
    "fmt"
    "sync"
)

func printMessage(msg string, wg *sync.WaitGroup) {
    fmt.Println(msg)
    wg.Done() // 完了を通知
}

func main() {
    var wg sync.WaitGroup

    messages := []string{"Hello", "World", "Goroutines"}

    for _, msg := range messages {
        wg.Add(1) // ゴルーチンを追加
        go printMessage(msg, &wg)
    }

    wg.Wait() // すべてのゴルーチンが終了するのを待つ
    fmt.Println("All goroutines finished")
}

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まとめ

競合状態:

• 複数のゴルーチンが同時に共有データを操作することで発生する問題。
• 解決には同期ツールが必要。

sync パッケージ:

• sync.Mutex を使用してデータの排他的制御を実現。
• sync.WaitGroup を使用してゴルーチンの終了を待機。

Goの並行処理は強力ですが、競合状態を回避し、安全性を確保するためには適切な同期ツールの使用が不可欠です。